キルギス共和国の主要民族であるキルギス人は、諸説ありますが、一般にはエニセイ川流域(シベリア)で暮らしていた人々が天山山脈のふもとに住み着いたのが起源と言われています。キルギスのことわざにいわく、「馬は人の翼」。騎馬遊牧民であるキルギスの人々は、まさにユーラシア大陸を馬にまたがり、飛ぶように駆け巡ったのです。
人々は季節ごとに移動し、羊、馬、ラクダ、牛といった家畜を育て、自然の恵みを受けながら遊牧生活を営んでいました。ソ連時代に、強制的な定住がすすめられたため、いまではその生活はほとんど見られません。ただ、現在でも遊牧の歴史に育まれた文化はキルギスの人々の日常生活の中で触れることができるでしょう。夏は、青草の生い茂る夏営地にボズウイ(ユルタ=天幕)を建てて生活し、そこで一夏、羊や馬を肥えさせ、冬にはまた里へ下りてきて、厳しい冬を越すというスタイルの牧畜をしている人々もいます。少し郊外に出れば、馬に乗った男性たちが羊を追う姿も見られますし、羊や馬の肉、乳を使った料理の中には暮らしの知恵がぎゅっと詰まっています。